ANALSIS -分析-












■ピッチングフォーム徹底分析

 第10回 濱野 雅慎(JR九州)Vs 岩崎 司(トヨタ自動車) 2010.11.21



社会人野球で昨年秋から鎬を削るJR九州とトヨタ自動車。この両チームのエースは共に1984年生まれの脂の乗り切った26歳のサイドスロー。このところ大ブレイクした2人だが、この2人には生い立ちから性格、ピッチングフォームなど大きな違いがある。そんな2人の大きな違いを追ってみた。


分類
項目
濱野 雅慎
(JR九州)
岩崎 司
(トヨタ自動車)
経歴
出身地
兵庫県
鹿児島県
高校
神戸西高
樟南高
大学
国士舘大
学生時代の球歴
・甲子園出場ナシ
・大学選手権出場ナシ
・2年夏から3季連続甲子園出場
入社
・2007年にセレクションで入社 ・2003年スカウトされ入社
タイトル
・第62回東京スポニチ大会 MVP(2007年)
・第62回九州大会 MVP(2008年)
・第36回日本選手権 MVP(2009年)
・第40回JABA四国大会 MVP(2010年)
・第81回都市対抗野球 久慈賞(2010年)
・第37回日本選手権 優秀選手賞(2010年)
・第37回日本選手権 MVP(2010年)
まとめ
・2年夏から3季連続で甲子園出場を果たすなどでドラフト候補にも名前が挙がり高校の先輩の上野(現広島)の後を追って東海の強豪トヨタ自動車に鳴物入りで入社した岩崎投手。

・それに対し高校、大学共に主だった経歴もなく大学でも1勝だったがセレクションで吉田博之監督の目にとまり関東から岩崎投手と入れ替わるように九州のJR九州に入社した濱野投手だった。

・しかし社会人になって立場は逆転。濱野投手は入社していきなり東京スポニチ大会の準々決勝と決勝で完封しMVPを獲得。その後、あらゆる大会において現在まで目覚しい活躍をしている。

・一方、岩崎投手は川岸(2003年中日→現楽天)、金子(2004年オリックス自由枠)、服部(2007年ロッテ1位)や 先輩の上野(2006年広島3位)、同期入社の吉見(2005年中日希望枠)、高校時代の同期で甲子園に共に出場した中澤(2009年ヤクルト1位)、大谷(2009年ロッテ2位)や佐竹投手も加わって錚々たる投手陣の影に隠れ、いつしか登板機会を狙ってオーバースローからサイドスローに転向。有望投手がプロに抜かれてようやく今年登板機会が巡ってきた。そして、残った投手陣から勝ち上がり先発のマウンドを任され一気に日本選手権で花開いた。
個人データ
身長/体重
184/85
174/77
得意な球
スライダー
ストレート
登板
先発、リリーフ
ほぼ先発
性格
負けず嫌い
ひょうきん
コメント
疲れがあったけど・・・後半は調子が上がりました。スライダーは低めに集まっていました。 うちにはいいピッチャーがたくさんいますんで・・・、社長〜 やりましたよ〜!
まとめ
・身長が高く手足の長い濱野投手は、肘の柔らかさが特徴で社会人になって下半身を使った全体のバランスで投げるオーソドックスなタイプで頭脳的な投手。

・一方、岩崎投手は身長はあまり高くなく太ももがチーム1太いずんぐりとした体型から腕を振ることだけを考えストレート中心で勝負する速球派。

※それぞれの特徴が下のピッチングフォームに表れている。
投球フォーム
プレート上

ランナーがいない時はノーワインドアップ

ランナーがいない時もセットポジション
足の上げ

・上げた足が直角よりやや上まで上がる
・つま先は下向き
・背筋は伸びている

・上げた足は直角まで
・つま先はやや上向き
・背筋を曲げ足を包み込む
体重移動

・前傾姿勢45度
・手を離し始める

・前傾姿勢30度
・両手は合わせたまま
ステップ

・前傾姿勢を保ったまま
・まだ胸は張らない
・頭の位置が体の中心にある

・体を起こす
・胸を張っている
・踏み出した足に体重を載せる
腕の振り

・腕の振りが横振り

・腕の振りが縦振り
フィニッシュ

・両足で着地
・腕を横に戻す

・右足はつま先立ち
・腕を上に戻す
まとめ
・濱野投手は、ゆっくりと足を上げてから上体を傾け前傾姿勢のままステップする。この間、一瞬間がありキャッチャーを良く見ている。その後、腕を前に伸ばし左腰のあたりまで腕を振り切って自然な形で腕を戻しフィニッシュ。着地もしっかりと腰を落とし守備体制に入る理想的なフォームである。前傾姿勢の上体から腕を横に振る形なので両サイドで勝負するタイプ。スライダーが切れるのもいいフォームで投げている証拠である。足を上げてから最後までの時間は3.4秒でゆったりとしたフォームに仕上がっている。

・岩崎投手は、足を上げるのはゆっくりと上体を傾けながら足を包み込むように上げる。これから体重移動するまでの形があまり変わらない。しかし、ステップする時上体を起こし腕を膝下辺りまで思い切って縦に振る。着地は右足が爪先立ち腕でいわゆる投げっぱなしのスピード重視の投げ方である。上体を起こし腕を縦に振る形なので高低で勝負するタイプ。足を上げてから最後までの時間は2.2秒と速い。特に足を下ろす時に一気にスピードを上げ、その勢いで思い切って腕を振りきる。腕も体の近くを通り強い下半身を使ったフォームとなっている。


両投手共にスピードもあり右打者をほぼ完璧に抑える。課題は左打者をどうやって打ち取るかが課題となっている。もう一つ落ちるボールに磨きを掛けたい。年齢的にドラフトは来年がラストチャンスとなるが、プロに行けなくても数年はエースで活躍出来る実力者である。今後の活躍にも期待している。


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